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マンスリーレポート

2017年03月

「プライドの承継」

私達の中でも御馴染みの「クロネコヤマト」が総量規制・配送費値上げをしていくという問題が起きて新聞紙上を賑わせています。

これは今のニュースということで片付く話でなく、将来に向けて2つの大きな課題があると思っています。

ひとつは、「労働力不足の問題」(将来どうなっていくのでしょうか?)

もうひとつは「付加価値の問題」(コモディティ化の限界?)

これらはこれからの日本経済の行く末の縮図のような話しだと思います。

まず前者についてですが・・・・

かつて、高度経済成長期は労働力が豊富(≒仕事が増えて、人も充分)だった時代から、バブル崩壊により市場が縮小

(≒仕事がなくなり、人が余る。。。)してきました。

経済成長することを目指すのが資本主義国家のあるべき姿ですので、ここでいえば「働く人も、職も増える」ことは理想的ですが、

経済成長も常に右肩上がりなどということもありません!

バブルが崩壊したことで、仕事が減り、人が余る、そんな時にはなんとか「職、仕事、事業」をつくっていくこと、、

つまり「なんとか市場を伸ばす」ことに集中することである意味理屈的には目的が達せられたわけです。

しかし、今ないしはこれからは、市場を増やす(経済成長を促進する)ことをしても、そこで従事する人が

居ないという現象が起きているということです。

つまり「仕事は増えるけど、人が不足する」という事態です。

人が居なければ仕事になりません、従って経済成長を促進する環境になっても、それが足元でまごつかない状態です。

(すき家でも24時間営業したほうが売上、利益があがり、顧客サービスも増すのでとてもいいわけですが、

働く人がいないがために断念してしまいましたが、これが典型的な事例です)

AIやロボットが今後導入されていくことでそれが解消されていくという議論が残されていますが、

それでも「人の手」が不要になることはありえません。

ヤマトも、もはや人手不足で悲鳴を上げているわけですから、仕事を減らすしかない・・・・

この類の話は日本の産業界全般においてはほぼ共通してきている課題です!

そしてもうひとつ後者の問題・・・

これまでの常識で言えば「品質が一定」になれば、その価格が上がってくることはありませんでした。

ヤマト(だけでなく、佐川も日本郵政も一緒ですけど・・・)の宅配サービスに他社との「品質の差」はありません!

言い方を悪くすると、「単に物を人から人へと届ける仕事」です!

送り主から預かり主に渡る上で何か期待値があがるわけではありません!言うなれば、スピードとか時間指定できるかどうかくらいでしょう。

つまり「コモディティ化」(=一般化)、同質化、汎用可能)されたサービスであり商品なのです。

(もっと簡単に言えば、ヤマトの配達員が明日佐川に移ったからといって、佐川に発注を変えるってことはしない・・・

というくらい汎用性が利くって話しです)

「コモディティ化された商品(サービス)」が値上がりしていくなどということはこれまで古今東西ありなかったことです!

むしろ量的拡大がかなうことから値下がっていくのが常識的でした。

しかし、今回のヤマトのニュースはここが根底から覆っています。

しかも、「値上げする」となったら普通、値上げされる顧客側は簡単に受け入れることはしません!

しかし、今回顧客各社の反応を見ていたら、「仕方ないか・・」という反応が大方です!

私、この「労働力」そして「付加価値について」の問題は今後受け流してはならない私達に

とっても大いに関係することだと思っています!

今、日本政府の大きなテーマは「経済成長」です!つまり「行け行けドンドン」です!

景気がよくなることはおおよそ悪い話ではありませんのでそれはそれでOKです!

しかし、その波に乗れないという事態も想定されるわけです。

私達に少し関係するところでいう「観光」「地域創生」という話題があります!

その掛け声も大きくなり、そのための政策としてインバウンド、外国からの観光客を主体にした

「入国者」を増やすことで経済成長の一助になることを促進させています。

それも大変重要なことはよくわかりますが、実は、もっと根っこのところで「地域」を捉えた場合、

一時的な観光客などの「流入者を増やす」ことよりも、重要かつ深刻なのは「流出者を減らす」ことではないかと思うわけです。

人口が減少してしまっては、そこで産業が育たない、どころか、生まれてこない。。なんて事態になります!

ではどうしたらよいのでしょう??

「流出者を減らす」ためには、その地域(地元)の魅力を高めるしかありません。

その地域の魅力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか??

私は、ある意味「(どうにかして!)高める行動」よりも「(勝手に!)高まる仕組み」を築くことが重要なのではないかと思うのです!

それって、とどのつまりは「ここに住んでいる(ないしは居ついている)ことの市民の愛着度が高まるようにする」ということです。

まさにそれは「CIVIC PRIDRE」、、、日本語でいえば「民度」です。

帰属意識が高く、愛着の持てる!!ということが、本来のその地域の活力に直結するのだと思います。

勿論、そんな地域は外から見ても、魅力に感じるのではないでしょうか?

人に置き換えても明確だと思いますが、楽しそうにしている人に人が集まります(逆にいえば楽しそうでない人の元には集まりません)

さて、この「地域」や「人」を「会社」に置き換えることも出来るのではないでしょうか。

冒頭に紹介しました「クロネコヤマト」社名「ヤマトホールディング」ですが、

この逼迫した市場環境の中で私はとても応援したい会社です。

記憶に新しい話しですが、丁度今から6年前東日本大震災が起きた後、この会社が取った行動がその理由です。

「宅配1個に対して10円の寄付をする」

それは総額にして140億円、ヤマト社の純利益の40%にも及ぶ額です。

これを当時の木川社長(現会長)が即断即決で実行したことです。

聞いた話しですが、この決断を株主や投資家、アナリストなどが集まる総会や説明会で躊躇なく決議されたそうです!

当然、そこに集まる人々はヤマト社の利害関係者ですから、自分に入るであろう配当金や株式価値が毀損される

ようなこの展開に反対するのは当然、ましてや株主代表訴訟などなどにもなりかねない話でした、、、

そんな緊迫するような場で発せられたその決断の理由はひとつ

「当社は東北を生い立ちにしている企業で、かつて東北に育ててもらった会社なので!」だそうです。

この決断の言に誰ひとりとしてそこに異議を唱える人はいなかったようです!

むしろ称賛されたという話しです。

まさに企業トップの覚悟が伝わった瞬間です。

この話しを聞いて、私は身震いしました。

ちなみにこの決断を下した木川社長は、ヤマト創業者の故小倉昌男氏と直接仕事はしたことがないそうです。

銀行出身で出向してきたいわば「サラリーマン社長」です。

そんな社長がなんでなぜこんな大胆な決断が出来たのかという話しですが、そのときの言が

「この会社にはそうさせる(決断をさせる)空気がある」

私、その話しを聞いて再び身震いしました。

この会社の社訓に「ヤマトは我なり」という文言があります。

まさにその社訓にこめられた魂の言葉(言霊)を実行に移したわけです。

そんな話しを知った私からするとヤマト社が総量規制、値上げもするなどをすると聞いて

「そりゃドンドンそうすればいい!そもそもそんな可及的に荷物を受け取る必要がない!」などと思った次第なのです。

これは組織の風土が醸し出す社風、もっといえば「社度」に他ならないと思うのです。

これは、地域でもまた国家でも一緒だと思うのです。

「プライド」それはその組織の信念、理想、ビジョン、フィロソフィー、考え方、、、、

色々言い回しはそれぞれだと思いますが、「決断をする」ことには基準があり、

その根っこにあるものが社会や人々を突き動かすのだと思います。

応援される会社、応援される地域、応援される人になるためには、「覚悟」があるのかないのか、

そしてそれは伝播、伝承されてはじめて伝わるものなのだと思います。

労働力の問題はこれから大手,中小問わず、また業種を問わず続いていくでしょう!

それに加えて、冒頭あげた2つ目の課題「付加価値の問題」・・・

コモディティ化された商品(サービス)を扱う企業にとって、最大の付加価値、差別化できるものは

「社風・社度」なのだと強く確信しました。

ホロ社の社度の向上もまだまだ道半ばですが、改めてそのための研磨、理念を高め磨くことをドンドン続けていくことを決意しました。